もう一品 | 「今日の献立」 

もう一品

僕が台所で夕飯の支度をしているとき
妻は「仕事」をしております。 けっしてテレビの前でお茶を飲んでいるワケではありません。
と言って、僕が「無職」という事ではなく、一応「経営者」という立場ではあります。

僕の浮気がばれて、その罪滅ぼしに包丁を握っているワケでもありません。
妻が僕の食事を作るのがイヤで、仕方なく自分で料理しているという事でもありません。
基本的に夫婦仲は「円満」だと、、、僕は思っています。
ただし、今までは」の注釈付きですが。


妻の名誉?の為に言っておきますが、
彼女の料理が「不味い」という事もありません。
まぁ「満点!」とはいきませんが、一通りの料理は作れますし
「美味しい」です。
今でも、僕の帰りが遅くなったときは彼女が夕飯を作りますし、
平日の朝食は彼女が担当しています。


数年前から、妻の仕事が遅くなって僕の方が彼女の仕事終わりを待つようになりました。
それから夕飯の支度…では 食べ始めが9時近くになってしまうので
もともと「料理」が好きだった僕が台所の立つようになったのです。

もっともそれ以前から ちょくちょく台所には立っていました。


僕は毎晩、ビール一本程度ですが、かならず晩酌をします。
酒飲みの方なら分かって頂けるでしょうが、やっぱり「肴」が欲しくなりますよね。
もちろん「おかず」とは別に… 何でも良い、と言えば何でも良いんだけど
いつも瓶詰めの「ザーサイ」や「粒ウニ」じゃぁどうも味気ない。
そこで、つい口に出るのは、

「お~~い、なんかないか?」

です。この時、心の中では

『なんだよ、また も○屋のザーサイかよ!』
 
と不満モードに突入してるワケですね。

「なんかって、何?」

「だから、、、 肴になるようなモンだよ」 

「ったく!『なんか』って言えば肴に決まってるだろうが!」← 小声で

 
しばらくして、小皿にのった「ミルキー飴」のようなモノが出てきました。

「飴なめながら、ビールは飲めねぇだろが!」

「飴なわけないでしょ。チーズよ」

なるほどよく見るとセロハンに包んであるのは白いチーズでした。

「馬鹿!これって子供のおやつじゃないか!!」 

って反撃を開始!したのは、10年前まで。

その一言から始まる憂鬱な数日間を予想する術は10年の結婚生活が教えてくれました。


僕と妻の目の前にある現実は、
小皿にのった 数粒のチーズ…
それは誰が見ても明らか。 でも、そのチーズに込められたそれぞれの思いは複雑です。

それを紐解いていくことが、夫婦円満の秘訣だと僕は思っていますし、
僕が台所に立つようになった理由もそこにあります。



続きは次回。。。